新型コロナウイルス感染症拡大により非常事態宣言が世界各国で出されている現在、ベルギーとオランダの大学の共同研究により、ジョギングをする際には2mの距離では不十分で、10mのソーシャルディスタンスを必要という研究結果が発表された。
この発表では隣り合って走るときは気流の影響で呼気などに曝露されることは少ないが、縦に連なって走る場合、前を走る人の呼気などを後ろの人が被ってしまうというもの。
シミュレーション結果などから10mの間隔が必要としている。
これは発表されると同時に世界中を駆け巡り、日本でもメディアによって取り上げられている。
しかし、私たちは注意深くこの研究を読んでからその受け取り方を考えるべきだろう。
まず、発表された元の論文の冒頭には「preprint」の文字が付されている。
これは論文などを発表する前に必要な査読(同じ分野の研究者等による信頼性のチェック)がされる前のものであることを意味する。
通例学術界では査読を経ていない論文は論文とは認められず、科学的な確からしさを担保できないものとして扱われる。
なにより本研究の筆頭を務めるブロッケン教授(オランダ・アイントホーフェン大学、ベルギー・ルーベン大学)は複数の取材や自身のツイッターなどを通し、「もっと冷静に受け止め、過剰に反応しないようにすべきだ」と語っている。
ブロッケン教授によれば、この非常事態の中、半年またはそれ以上の時間がかかる査読を待っていては危機に対応できないため、まずメディアを含めた一般に公開し、そして研究継続のためのファンディングを獲得し、そして査読や同じ研究分野の研究者からのレビューを待つつもりだったとのことである。
なによりこの結果が独り歩きし、多くの人がかえって部屋の中に閉じこもってしまうことはブロッケン教授の願うところではないようだ。
発表文献
Towards aerodynamically equivalent COVID-19 1.5 m social distancing for walking and running
参考
Belgian study on safe distancing while exercising goes viral(Cyclingnews)
Are Running or Cycling Actually Risks for Spreading Covid-19?(WIRED)
The Viral ‘Study’ About Runners Spreading Coronavirus Is Not Actually a Study(VICE)
(写真はイメージ)
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