選手が自主的に給与返納を申し出
コンサドーレ札幌と契約を結ぶ全28選手が給与の一部減額をクラブに申し入れた。6日野々村芳和社長が明らかにした。
選手個々の額については明らかにされていないが、総額で1億円ほどと言われている。
クラブのホームページでは宮澤裕樹キャプテンを始めとした、コンサドーレ選手一同からのメッセージが掲載されており、全選手合意のもとで今回の給与減額決定をした旨が述べられてる。
Jリーグは2月25日に村井チェアマンが会見し、3月15日までの公式戦94試合を延期することを発表した。その後は再開のタイミングを模索したものの、度々スケジュールの見直しに迫られ、現在に至るまで再開の見通しがたっていない。
Jリーグの各クラブはプロの興業団体であるので、主たる興業である試合が開催できなければ、経営に大きな影響が出る。
そうした切迫した状況の中、過去に例を見ない選手側からの自主的な給与減額の申し入れが行われた。
リーグ戦延期が経営に与える影響は
ここではコンサドーレ札幌をモデルに、公表されている財務データなどを元にしてJリーグ開催中止の影響がクラブの経営にどのような影響を与えるのかを見てみたい。
まずJリーグの各クラブの収入源は大きく分けて入場料収入・スポンサー収入・Jリーグ配分金からなる。Jリーグ配分金にはテレビ放映権や賞金が含まれる。
クラブ経営においてはこの3つからバランス良く収入を得ているのが良いとされている。
2018年度のコンサドーレ札幌の売上高合計は30億円であり、J1平均の48億円を下回っている。なお最高はヴィッセル神戸の97億円であり最低Vファーレン長崎の23億円だった。
コンサドーレ札幌の売上の内訳を見てみると、入場料収入が6億円、スポンサー収入が13億円、Jリーグ配分金が4億円だった。その他にはグッズ販売や移籍金がある。
2018シーズンは全34節で半数の17試合ががホーム開催、これにルヴァンカップのホーム開催3試合と天皇杯1試合を加えると21試合となり、入場料収入を1試合あたりに換算するとおよそ2900万円となる。
今シーズンの予定試合が最終的にどの程度消化されるか不明であるが、仮に試合数が減少すれば、1試合につき2900万円程度の売上が吹き飛ぶことになる。
Jリーグはリーグを成り立たせる目安として消化試合を全体の75%としているが、仮に全試合数が6試合減の15試合となった場合は、入場料収入が6億円から4億4千万に減少する。
現在は度重なる再開の延期により75%の消化も怪しい上、観客が集まりにくい平日開催の増加やルヴァンカップの方式見直しによる試合数の減少も検討されており、全体としてさらに厳しい数字になる可能性が高い。
選手から総額1億円程度の給与減額の申し入れがあったものの、この時点で既に売上高減少予想額が大きく上回っている。
当然試合が少なければ物販収入やゲーム単位のスポンサー収入なども減少する。試合開催に伴なう施設利用料やスタッフ人件費は減少するものの、露出機会の減少はチームユニフォームなどの年間スポンサーの契約金額見直しにも繋がりかねない。
なおJ1平均では年間の試合開催経費は3.3億円となっている。
アカデミーやスクールも同様で、一定の維持コストはかかるものの、月々のスクール月謝などは減少するだろう。
新型コロナウイルスによる経済停滞でどの業種も苦しい経営を強いられる中、必ずしもJクラブを支援できる万全な体制のスポンサーばかりではないことが考えられる。
なにより再開の見通しが立っていない以上、再開後の経営計画やスポンサーなどとの交渉もできない状況。
最終的にどの程度Jリーグ側からの支援があるかもわからないが、現在リーグとしては競争から共存に舵を取り、脱落(消滅)するクラブを出さないようにという方向が見られる。
今回とは事情が違うとは言え、天皇杯優勝で有終の美を飾った横浜フリューゲルス以来のクラブ消滅は避けたい意向だ。
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